貧乏人は外米を食え ― 2010/10/28 18:52
年配の方なら聞き覚えのある言葉が思い浮かんだ。あちらは「麦」だったが。菅首相はTPP(環太平洋パートナーシップ)交渉への参加を表明した。
おそらく輸出産業の後押しがあってのことだろう。貿易収支も90年代に入って以来下降線を辿っているようだ。たとえ貿易収支が黒字でも、円高を避けるために介入したドル買いで、貿易で得た巨大な富は安い「ドル=$」と引き換えに高い「円=¥」となってアメリカ本国に還流し帳消しになっているようだ。それでも貿易収支に焦点を合せれば、黒字なのだから、貿易収支赤字国は市場の開放を求めてくるは自然な流れだ。その流れに乗ろうというのか。
年収200万円以下の人口が1千万人を超えている状況では、生活に欠かせない食糧をさらに切り詰める必要に迫られている人々は、私もその一員であるが、安い輸入米に殺到することだろう。生鮮食品の葉菜類でさえ輸入品が市場に溢れている。
それでは食糧自給率は低いままでよいのだろうか。国防のためには1機数百億もする戦闘機が何機も必要だいう声が大きいが、腹が減っては戦は出来ないのだ。戦争に備えるために食糧自給率を高める必要がある、というのが論点ではない。自分で食べるものはできるだけ自分で用意する、が平和の根本だ。お互いに自給できないものを貿易を通して供することで生活も豊かになる。
「ジャガイモの世界史」伊藤章冶著(中公新書)によれば、ドイツ市民の多くが、第二次世界大戦後の食糧難を記憶に止め、家庭菜園(クラインガルテン)を持っているそうだ。最低でも500㎡はあり、いざ食糧が手に入らない、となっても、菜園すべてをジャガイモ畑にすれば、飢えは凌げるようになっているらしい。こういう生活自衛の意識の方が遥かに健全だ。
食糧自給率を高め、たとえ日本経済が傾いても、日本の財政が破綻して円が紙くずになっても、何とか自前のもので飢えを避けることが出来る体制を整えることの方が大事だし、安心だ。飢えほど恐ろしいものはない。
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