「農業とは景色を作るもの」2018/04/29 21:00

毎年、この時期に開催されるシンポジウム「種と食と農」に参加してきた。今回で2回目の参加だが期待を裏切らない充実した内容だった。惜しむらくは満席に近かった昨年とはちがって空席が目立ったことだ。

講演:
宇根豊さん「農を語る・自分自身の精神革命を求めて」
アーサー・ビナードさん「たねなしブドウを語る」
天笠啓祐さん「食を語る」

講演者3名のうち2名が口裏を合わせたわけでなく口にした言葉が「農業とは景色を作るもの」が印象的だった。それぞれ表現は異なっていたが内容はこんなものだった。

受付のテーブルに置かれた「百姓学宣言」宇根豊著が目に止まった。幸運にも傍らにいた人が著者本人で内容について話を聞くとができた。5反の田んぼで手植えをしながら27品種の米を栽培していることなど興味深い話が尽きなかったが、あとは著作を読むことにして会場に入った。

その宇根さん、ドイツを訪れて驚いたことは美しい景観をなす農地が広がり耕作放棄地がまったくなかったことだという。耕作放棄地拡大が問題になっている日本との差に原因を求めたところ、農地が景観だけでなく環境保全に大きな役割をはたしていることを都市住民が認識しその応分のコストを負担すべしという意識を持っていることだった。

天笠さんはTPPがアメリカ抜きで交渉が進んでいく中、遺伝子組み換え作物の流入増加に加えて食品中の残留農薬や添加物の許容量・種類の認可基準が加速度的に緩められている危機的現状を訴えていた。
このような事態に対しアメリカでは母親たちが立ち上がり「マムズ・アクロス・アメリカの運動」が全米に広がり影響力を持ち始めているという。

それを受けてアメリカ国籍のアーサー・ビナードさんは、何も起こらない日本の現状を憂え檄を飛ばしていた。予定の「たねなしブドウを語る」は何かの間違いで「たねなし日本のふがいなさ」が今日のテーマだったと、本気かどうかわからないが訂正をしていた。実際、アーサー・ビナードさんの話はTPPがもたらす弊害の大きさが中心だった。そして最後に「『農業とは景色を作るもの』で農産物を効率よく作って金儲けすることではない」というのを聞いて、「百姓」として何をすべきかが少し見えてきた。

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